中級講座 Ⅰ.理論・基礎知識 経営と広報 はじめに
こんにちは、荒木洋二です。
今回から中級講座「Ⅰ.理論・基礎知識編」の最終講座「経営と広報」を解説します。12回にわたってお届けします。
「経営と広報」は次のスライドに記載のとおり、三つの項目に分かれています。
まず、広報PRと、それぞれがどんなつながりがあるのかを明らかにします。PRとは、パブリック・リレーションズのことです。 これとリスクマネジメント、CSR(企業の社会的責任)のつながりから見ていきましょう。
全てに共通することがあります。それが何か分かりますか。
答えは「利害関係者」、ステークホルダーです。パブリックリレーションズにもリスクマネジメントにもCSRにも必ず「利害関係者」という言葉が出てきます。全てに共通しています。初級講座「Ⅰ.理論・基礎知識編」の「経営資源」のところで説明しました。利害関係者は経営資源です。経営資源とは、一般的にはヒト・モノ・カネ・情報を指します。この四つがそもそも何なのかを突き詰めていくと、利害関係者こそ経営資源であることが分かりました。同時に利害関係者は価値を共に創造する仲間でもあります。企業・組織にとって価値を共に創造していく仲間、チーム、それが利害関係者です。
利害関係者については、中級講座「Ⅰ.理論・基礎知識編」の「戦略設計と活動計画/戦略とは」の講座でも解説しています。
経営戦略とは何か。経営戦略とは利害関係者との約束です。では、企業価値とは何か。利害関係者の信頼の総和です。
このように企業経営、組織経営を語るとき、利害関係者は絶対に欠かせません。パブリック・リレーションズ、リスクマネジメント、CSRのそれぞれを利害関係者の観点でひもとくと次のとおりです。
■広報・パブリック・リレーションズ
利害関係者と共感に基づく信頼関係を築くこと
(利害関係者から)選ばれ続けるために組織の価値を自ら伝え続けること
■リスクマネジメント
利害関係者とリスク(情報)を共有し、(共に)未来を創り、危機を乗り越えていくこと
(利害関係者から)選ばれ続けるために組織の価値を自ら守り続けること
■CSR(企業の社会的責任)
いかなる場面でも利害関係者と正面から向き合うこと
(利害関係者から)選ばれ続けるために公正かつ誠実に振る舞い続ける
正面から向き合うという姿勢は、もちろんパブリック・リレーションズにもリスクマネジメントにも共通しています。経営の基本姿勢です。
利害関係者とは、企業・組織にとって利益も損害も共有する、相互に影響を与え合う関係者のことです。近年、「マルチステークホルダー主義」が米国でも唱えられるようになりました。利害関係者と向き合い、共に価値を生み出し、持続的かつ社会的な利益を生み出すことが、全ての企業・組織に求められています。
次回からは「1.リスクマネジメントの基礎」を4回にわたり、解説します。