中級講座 Ⅰ.理論・基礎知識 経営と広報 リスク・コミュニケーション 〜リスク・コミュニケーションとは〜

こんにちは、荒木洋二です。

スライドに記載のとおり、今回も「経営と広報」の「3.リスク・コミュニケーション」です。前回と今回、次回の3回にわたり、解説します。

前回は「①情報開示と説明責任」の解説でした。今回は「②リスク・コミュニケーションとは」を解説します。次のスライドに記載のとおり、次回が「③クライシス・コミュニケーションとは」で最終回です。

②リスク・コミュニケーションとは

リスク・コミュニケーションとは、企業・組織が自らに関わる「リスク情報」を社会、利害関係者に開示することです。そして、開示した情報に関する説明責任を行うことです。リスク・コミュニケーションは情報開示と説明責任がセットなのです。両輪といえます。二つそろって、初めて成り立ちます。

日常つまり平時より、どんなリスクがあるのか、それらリスクが顕在化する可能性はどの程度なのか。これらを隠さず、ウソをつかないで伝えることです。リスク情報を開示するのです。

留意すべきこととして、開示さえすれば、それだけでいいという意味ではありません。情報の受け手、その相手に理解できるように伝えることがとても重要なのです。これが説明責任です。

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eラーニング講座の中で、何度か繰り返し述べているとおり、「ゼロリスク」はあり得ません。人間である限り、失敗やミスはつきものです。ある一定の環境や条件が整えば、リスクは顕在化します。

ゼロリスク意識がかえって損害の拡大につながることがあります。

例えば、新型コロナウイルス感染症がまん延した際、その現象が起こりました。日本では野党の党首がゼロリスクを叫んでいたし、専門家会議やマスコミ報道でも同様の主張が散見されました。コロナウイルスは、今まで人間社会と長い間にわたり共存してきました。コロナウイルスが絶滅したことはありません。過剰な感染対策が社会に歪みを生み、経済的困窮や精神的苦痛などのストレスにより自殺者が増えました。

危機意識の欠如にもつながります。

例えば、原子力発電所がかつてゼロリスクであるかのような認識を生活者に植え付けたこともそうです。危険学で著名な畑村洋太郎氏が、ドアプロジェクトなどで示したことも同様といえます。新型コロナウイルス感染症でいえば、マスクへの盲信が挙げられます。表情が分からないことにより、子どもの情緒に与える負の影響が見過ごされがちです。

企業・組織と社会の間には、厳然たる情報の非対称性が存在しています。企業・組織は、この情報の非対称性を解消するために、社会や利害関係者と積極的にリスク情報を共有すべきです。それでも両者のリスク認知にはギャップが生じます。このギャップをいかに埋めるのか。

そのために必要なのが徹底した情報開示と説明責任です。リスク情報も抜け漏れなく開示し、理解できるように丁寧に説明するのです。

日本社会を見てみますと、社会全体でリスク情報を共有する取り組みが以前よりなされています。次のスライドのとおりです。

今回は、「②リスク・コミュニケーションとは」を解説しました。次回は、中級講座「理論・基礎知識編」の最後の講座です。「③クライシス・コミュニケーションとは」について解説します。

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