【過去の人気コラム】#10 広報とPRって何が違うの?(2)


2019年年末から始めた「荒木洋二のPRコラム」と「聴くコラム」ですが、おかげさまで85回の配信を重ねて参りました。
2022年7月から2022年9月までは、筆者が出版に向けた執筆活動に集中させていただきたく、新規のコラムはお休みとさせていただきます。そこで再開するまでの間、過去の配信の中から人気のあったコラムを再送させていただきます。


2021年1月14日配信

こんにちは、荒木洋二です。

日本社会では「広報」と「PR」、どちらの言葉もある程度浸透しています。「自己PR」や「観光PR」のように、PRの方がより普及し市民権を得ているのではないでしょうか。企業社会でもPRの方に軍配が上がるでしょう。

(「広報とPRって何が違うの? (1)」の記事はこちらから)

◆広報とPRは同じ意味

次に「広報」という言葉はどのようにして生まれたのでしょうか。当コラムでは、歴史の詳細まで伝えることは別の機会に譲ります。大胆に端折りますと、実はパブリック・リレーションズの訳語として、「広報」は誕生したといえます。行政では一般社会や企業社会以上に浸透しており、ほぼ全ての基礎自治体には「広報課」が設置されています。どんな小さな自治体でも広報紙を発行しています。私の出身地である静岡・伊豆にある下田市は人口約2万人の小さな町ですが、私が住んでいた昭和40~50年代後半だけでなく、今も変わらず広報紙を発行しています。広報をそのまま訓読みにすると「広く報ずる」ということです。報ずるとは知らせることですから、「リレーション」の片側だけです。広く報ずるだけでなく、「広く聴く」ことで関係は築かれます。そのため一部自治体では、「広報・広聴課」という名称が使われています。

こうしてひも解いていくと、広報とPRは「本来」は同じ意味だということが分かります。同意語、同義語なのです。

◆本質を捉え、成果につながる行動を

ここで新たな疑問が生まれます。企業社会では「IR」とは「Investor Relations(インべスター・リレーションズ)=株主向け広報」として、定着しています。さらに「企業広報(コーポレートPR)」や「製品広報(プロダクトPR)」などの使われ方もよく耳にします。

なぜ、企業社会ではこのような使い方をするのか。

先ほど、あえて「本来」と加えたのにも理由があります。企業社会では、第二次世界大戦後、報道機関の成長と普及とあいまって、「広報=パブリシティ」という認識が現場で定着してしまったと私は見ています。パブリシティとは、企業・組織が報道機関に向けて、プレスリリースなどにより情報を発信し、その情報をもとにニュースや記事として報道する一連の流れを指した言葉です。企業社会では広報といえば、パブリシティを指すということが市民権を得てしまっています。

ですから、わざわざ株主向け広報や企業広報のように広報の前に伝える対象が誰なのか、伝える内容が何のかを示す言葉を加えているのです。「本来」の意味ではなく、ある特定の対象と、「知らせる」という片側だけの意味で使われるようになったということです。

広報とPRのように、複雑に入り組み原型をとどめなくなったビジネス用語の数々が、企業社会の日常では無数に飛び交っています。深く意味を理解しようとせずに「何となく」使っていていいのでしょうか。ちゃんと対話できているのでしょうか。その姿勢で取り組んでいて、個人や組織の成長につながる成果が得られるのでしょうか。

広報とPRは本来同意語であることを伝えたくて、当社はあえて「広報PR」と続けて、くっ付けて使っています。

用語を整理し、本来の意味を理解し、その意味するところの「本質」をしっかり捉えましょう。その土台の上に行動することで、成果につながる仕事ができるのではないでしょうか。

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