「個人や企業の成長に関わりたい」約30年間テレビ業界で培った経験やつながりを活用し、テレビ局と関わるための方法を指南
第3回 広報人インタビュー
メディア・コンテンツ関連の総合プロデューサー 増田尚志さん
◇ 広告宣伝やアライアンスのニーズにテレビ局を活用
荒木:増田さんにどういうことを相談できるのか、あるいは何を解決してくれるのかを教えてください。
増田:はい。大きく分けて、二つあります。テレビ局で長い間、勤務してきて、多くの部署や立場を経験しました。全国の局の中でもそのような経験は、異例だと思います。そのことから、テレビに関わりたい人のあらゆるニーズにお応えできればと考えています。
一つ目は、広告宣伝、いわゆる「テレビCMや番組を作りたい」というようなことです。それから、PR(=パブリシティ)ですね。「ニュースなどで取り上げて欲しい」というようなことです。
二つ目は、アライアンスのニーズもあると思っています。「テレビ局と組んで事業やイベントをしたい」とかですね。テレビ局との組み方にはいろいろあります。「テレビ局と組みたい」というニーズに対して、全て応えられるというところが大きいです。
荒木:テレビと何らかの形で「組みたい・関わりたい」場合は、増田さんに全部相談すれば、いろいろな出口があるということですね。
増田:そうです。1回相談していただけたらいいですね。予算や何を求めているかなどですね。テレビ局は(地上波では)全国に100数局と、さらにBSもあります。地域によりますけど、希望があれば全部当たりに行きます。全局と付き合おうと思ったら、付き合えますし、横のつながりもあります。
荒木:そのようなことには、特別なサービス名があるんですか。それとも、まず全て相談に乗ってから、要望に合うサービスを提供していく形態ですか。
増田:そうですね、この二つ目のサービスは、まだプロダクトとしてきちっと確立できていませんので、現状は「こんな商品がある」というものはない状態です。そこが自分にとって課題なんです。
荒木:それは先ほど話にあったように、広告や報道、番組構成、イベント、あるいはそれを組み合わせるというような、テレビに関わるためのことであれば「何でもできます」ということですね。
増田:「全て実現できます」となると、予算なども関係して一概には言えないので、「テレビ局と関わるための方法をご指南できます」ということです。
荒木:それは、全国の100数局ある全てのテレビ局に、当たりを付けて動いて、「要望に沿う形にご提案できます」ということですね。
◇ テレビ局の部署全般を経験 各現場の管理職を歴任し、予算管理も経験
荒木:なぜそこまで全てにおいて、いろいろな提案ができるのでしょうか。テレビ局で勤務していても多くの人は、報道ばかりだったり広告ばかりだったりと経験に偏りがでるように思います。
増田:それは今まで約30年間勤務する中で、テレビ局のあらゆる部門を経験して培ったからです。報道制作部門(ニュースを取り上げたり、番組を作ったり)に14年間くらい、営業部門(CMを作る)に約10年間いました。それから、コンテンツビジネス部門(映画やドラマ、アニメなどを作るための出資関連)に3年間、イベント部門に最後の1年間は在籍しました。
さらに、新規事業部門ではM&Aのプランやネットと組んだ新しいビジネスの構築など、テレビビジネスに関わる部署の全般(企画構築から組織の醸成、予算管理、プロダクトの実装)を把握し、経験を積んできました。現場作業だけでは見えてこないことがあるんですが、それぞれで管理職を歴任し、お金の流れも把握できました。おそらくテレビ局勤務で経験することは、全て満たしています。そういった経験ができることは珍しいと思います。
荒木:そのように、いろいろな部署を経験することはあまりないものなんですね。
増田:そうですね。テレビ大阪という放送局の規模が、適度に大きくて適度に小さいことで、一つの部署で扱っている案件(部門)が多いことで経験できたと思います。東京キー局の場合は、規模が10倍ぐらいになるんです。例えば、コンテンツビジネス部門を比較すると、映画なら映画の部門、アニメ出資ならアニメ出資の部門というように細かく分かれているんです。それを全部経験しようと思うと30年間では全然足りないんですよ。そういう局の規模による特有のものがあります。さらに小さい局になると、コンテンツ部門はありません。出資媒体や配信ビジネスも数年前までは、ほとんどなかったので局の規模による特性で経験できることに違いがでます。
荒木:増田さんは、報道側にもいたわけですよね。報道担当の人たちはずっと報道というケースが多いのでしょうか。営業に異動することなどはないのでしょうか。
増田:報道と営業の異動は、テレビ局では割とあります。なぜあるかというと、おそらく「外に出て人としゃべる」という動き方が同じということがあります。さらに、報道から営業に行くと良い影響があるんですよ。営業しか経験のない人は、ものを作れないので、CMを作ったりリリースを出したりした時に、映像ではどう扱ったらいいかが分かりません。報道や制作の経験者だと、ノウハウが分かるので、クライアントに対するサービス具合いが向上するんですよね。
◇ 時代の変化やクライアントのニーズに幅広く対応できる商品を提案
荒木:では、約30年間テレビ局で勤務されて、独立をされたのはなぜですか。
増田:最大の理由は、局の中でできることをやりきったということが大きいです。あとは、大小関係なく、個人や企業の成長にもっと関わっていきたいという思いからです。時代が変わり、いろいろな商品が出る中、放送局にいては、「クライアントのニーズに幅広く応えられない」と感じるようになってきました。
例えば、営業部門にいた時に、クライアントさんがやりたいキャンペーン、届けたいターゲットがありました。その場合、自分の置かれた立場では、テレビ大阪しか提案できないんです。予算が50万円の場合ですと、今はネットの時代なので、Webマーケティングの方が需要がある場合もありますし、予算の面でもWebでやったほうがいいんですよ。その結果、広告費が1000万、2000万円となって初めてテレビでやればいいと思うんです。それでも、テレビ局にいたら最初から50万円でできる内容を提案しなければならないんですよね。テレビ局だと50万円で、できる内容はごく限られたものになってしまいます。
さらに、もう一つあります。それは、若い経営者が大きく成長していくところを横で見ていたいということです。スタートアップが会社を立ち上げた当初、テレビと付き合うことは難しいじゃないですか。これをテレビ局にいるだけでは何もしてあげられないんですけど、そこに対して、テレビ局にいた経験をもとにアドバイスできれば、少し違う形で役に立つことができると考えています。そろそろ定年も見えてくる時期なので、新しい道に出たという形です。
◇ ビジネスにおけるITスキルの地域格差を痛感 関西発の20代実業家を企業ブランディングの視点から支援
荒木:今、独立して、まだ1年未満くらいでしょうか。今後の夢や目標、または今後こういうことを展開していきたいなど、目指すものがあれば教えていただけますでしょうか。
増田:はい。独立して、半年と少しくらいです。以前、東京支社で長く勤務してから、大阪に戻った時に痛切に感じたことがあります。ネット知識というかITに対するビジネスの視点において、「地方との差」が大きいと感じましたね。それなりに規模の大きいテレビ大阪に勤めていても、SNSのことを理解していない人も多くいましたね。
それから、関西から出てくるネット系の有名企業は、本当にないんですよね。だいたい東京に集中していますね。これには、資金調達などいろいろな問題があって、一概にいえるものではないんですが、疑問を感じました。なので、できれば関西発の20代の経営者時代から付き合って、10年後ぐらいにGAFA(ガーファ)を超えるぐらいの、日本トップクラスの実業家になるような人と関わりたいなと思っています。若い経営者はおそらく起業した初期には、あまりお金も払えないでしょうから事業で付き合うことは難しいと思うんです。でも自分が他のところで稼ぐベースがあった上で、そういう人と付き合っていて、10年後に大きなビジネスをした時に、たくさん稼がせてもらえたらいいなと思っています。
荒木:具体的で面白いですね。
増田:そういう実業家を世に出そうと思うと、事業の動きと同時に、どのようにして出していくかということもセットになってくると思うんですよ。経営者が変な方向に進まないように、広報とかPRとかをしっかりとして、会社が大きくなった時のためにブランディングをしっかりしておくことが重要だと思います。その部分に関して役に立てるのではないかと思っています。