Weekly Essay マスメディアの沈黙、日本社会の沈黙
ジャニーズ事務所が7日(木)、記者会見を開きました。
先月29日(火)に「外部専門家による再発防止特別チーム」が調査報告書を公表したことをうけてのことです。同日、記者会見も行われました。同報告書は71ページにも及んでいます。最も注目すべき点は「マスメディアの沈黙」という指摘と、「解体的出直し」という踏み込んだ提言でしょう。同チームに関しては、当エッセイ(6月14日)でも言及しました。「構成するメンバーたちの発言を見ると、使命感を持っていることがうかがえ、かなり踏み込んだ調査を行うことが期待できます」という予想通りの報告書だったと評価しています。
フジテレビでの生中継で、当日の会見を始まりから1時間までは視聴しましたが(オンライン会議のため途中で断念)、後から4時間超に及んだと知りました。その後、ネットニュースを中心に記事を読み漁ったり、それら記事に対する「ネット民」の声(主に「ヤフコメ」)を拾ったり、翌8日(金)朝のフジテレビを視聴したり、情報収集に努めました。
最も違和感があったのは、マスメディアの姿勢です。再発防止特別チームから「マスメディアの沈黙」(同報告書52〜53ページ)が性加害を継続させ、被害を拡大させたことを厳しく指摘されながらも、社長の謝罪会見が一つもありませんでした。アナウンサーに短い公式見解を述べさせただけです。当事者意識のかけらもありません。厚顔無恥なのか、感覚自体が麻痺しているのか。このままではマスメディアの信頼低下に歯止めはかからないでしょう。過去に有罪判決が出たにもかかわらず、結果的に放置していた政府の責任も小さくないのではないでしょうか。
会見後の報道で最も目を見張ったのが、9日(土)、「Yahoo! ニュース」に掲載された英国の公共放送であるBBCの記事です。東京特派員のシャイマ・ハリル氏が執筆しています。BBCといえば、今年3月、故・ジャニー喜多川氏の性加害問題を扱ったドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」を放送しました。この放送が起点となり、全てが動き出したといえます。故・ジャニー喜多川氏のことを「捕食者=プレデター」と表現しました。
今回の記事は、「日本の公然の秘密」とセンセーショナルな見出しで始まっています。日本社会全体を断罪するかのような表現で、思わず息をのみました。マスメディアや政府だけが沈黙していたのではなく、日本社会全体も沈黙していたではないか、と刃物の切っ先を突きつけられたかのように受け止めました。
ジャニーズ問題に関しては、憶測や想像で語ることなく、事実をしっかりと自らの耳目で確かめたい、と身が引き締まる思いでした。
ジャニーズ問題に関しては、(手前味噌にはなりますが)ヤフーオーサーでもある石川慶子さんがコラムで継続的に取り上げています(9月6日時点で8回)。石川さんは、私が理事長を務めるリスクマネジメント専門人材育成のNPO法人で副理事長の任に就いています。私が広報PR業界に関わる最初のきっかけとなったPR会社時代の上司でもあります。
9月4日(月) 荒木洋二のPRコラム
広報PRコラム#94 「情報発信」をひもとく(9)
9月8日(金) Backstage 〜「舞台裏」は魅力の宝庫〜
Backstage #9 『ダイヤモンド・プレミアム』 有料会員数が3万5千超え