広報PRコラム#102 「情報発信」をひもとく(17)

こんにちは、荒木洋二です。

今回は伝達手段に関する3回目の解説です。

前回は、間接的な伝達手段に関して概観しました。企業は、現時点で接点のない相手には当然のこととして情報を伝えることができません。そんな場合、どうやって情報を伝えればいいのか。その最たる手段が、マスメディアを介した伝達であることを確認しました。

前回言及したとおり、マスコミ4媒体を介した伝達は、報道と広告に分類できます。しかし、マスコミ4媒体と違い、報道機能を持たないのがアウトドアメディア(看板、交通広告、施設広告など)です。インターネットがここまで浸透し、誰もがスマートフォン端末を所有する社会環境が追い風となり、アウトドアメディアでの広告は脚光を浴びています。同時にデジタルサイネージが徐々に広がることで、電車内でニュースに触れる機会も増えてきました。規模は小さいながらも報道機能も持ち始めた、ということです。

◾️印刷媒体を「選んでいない人」に届けるダイレクトメール

ここで忘れてはならない、間接的な伝達手段があります。それはダイレクトメールです。

当連載「情報発信をひもとく(5)」で情報の受け手(対象)を3種類に分けました。何を基準に分類したかというと認知の有無、関係の有無です。

・(自社のことを)知らない人(個人・法人)
・(自社のことを)知っている人(個人・法人)
・(自社のことを)選んでいる人(個人・法人)

ダイレクトメールは、パンフレットやチラシなどの印刷媒体を主に「知らない人」に届けます。ダイレクトメールを事業として営む会社がリストを保有しています。会社などの法人向けに特化した事業者もいるし、個人に特化した事業者もいます。個人・法人のいずれも展開している事業者もいるでしょう。そのほか、地域に特化したり、個人でも年代や収入で分類したりしています。
いずれも郵送が主なデリバリー手段です。自社の印刷媒体を郵便ポストに直接投函するポスティング、新聞の折込チラシもダイレクトメールの一種といえます。「知らない人」へ情報を届ける、いわゆるラストワンマイルを担っています。

もう少し掘り下げてみると、ダイレクトメールは「知らない人」だけに送るわけではありません。まだ「選んでいない人」に送っているのです。
何度か繰り返し情報を伝えることで、自社や自社の製品・サービスなどを相手が認知したとします。つまり「知っている人」の段階に上がったものの、まだ自社や自社の製品・サービスなどを選ぶに至っていない人たちがいます。購入や利用はもちろんのこと、資料請求や無料相談への問い合わせなど、何も行動を起こしていない場合、相手に関する情報を自社では何も取得できていない状態のままです。選んでいないだけでなく、何もつながっていない相手に対して、ダイレクトメールは有効かつ数少ない伝達手段の一つといえます。

◾️マーケティングの目的は認知獲得

「知らない人」への情報発信はマーケティングの領域といえます。つまりダイレクトメールはマーケティングの一種です。

情報発信の目的は「知らせるため」と「選ばれるため」の二つに大別できます。詳しくは、当連載「情報発信をひもとく(2)」と「同(3)」で解説しています。理解を深めるためにも改めて読み直してみてください。
誤解を恐れず、というか、分かりやすくするために言えば、マーケティングにおける第一義の目的は「知らせる」ことです。つまり認知獲得です。では、ブランディングにおける第一義の目的は何でしょうか。それは「選ばれる」ことです。いや、もっと本質を突きつめると「選ばれ続ける」ことなのです。

ここでマーケティングの領域を明らかにするために、前回まとめた伝達手段の印刷媒体の部分だけを再掲します。媒体ではなく、デリバリーに注目してみます。

前述のダイレクトメールはデリバリーの「郵送」に含まれます。企業が住所・所在地を把握している場合、直接郵送で情報を届けることができます。ただ、一切把握できていない場合、ダイレクトメールの専門事業者などを介して、間接的に郵送で届けるしかありません。
前回の報道のところで触れたとおり、デリバリーの「投函(記者クラブ)」も間接に分類されるのです。

となると、デリバリーの「手渡し」も同様のことがいえます。「営業」でいえば、飛び込み営業は印刷媒体を直接手渡してはいますが、情報を把握していない「知らない人」が対象なのでマーケティングの領域です。「展示会」も同様です。来場者は情報を把握していない「知らない人」がほとんどなので、これもマーケティングの領域ということです。「ファクス」を使ったダイレクトメールのことを「ファクスDM」といい、いまだにそれを生業とする事業者も、利用する企業も一定数存在しています。

◾️ストック型とフロー型

ここまで見てきたとおり、間接的な伝達手段はさまざまなプラットフォーム上で実行されていることが分かります。プラットフォームとは、サービスなど事業を展開している基盤のことです。ダイレクトメールは、ダイレクトメール事業者のリストという基盤の上に成り立っています。展示会は、製品・サービスを提供する側と利用する側が一堂に会する場、まさしく基盤そのものです。記者クラブや一斉配信サービスも記者と接点が持てる場であり、プラットフォームといえます。

これらは全て、自社とつながっていない人たちと接点を持てる場所です。知ってもらい、選んでもらえる可能性を秘めたプラットフォームです。

ただ、企業としてはこれらプラットフォームを利用しない限り、接点を持てません。企業自らが情報を保有できていないからです。これらを当社においては、「フロー型メディア」と名付けています。

次回はストック型とフロー型という分類方法で「④手段」の全体像を整理し、概観します。

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