【ポッドキャスト #77】自治体の「広報」は、誰に向けているのか

濱口さんと行政の入札案件に取り組んだ経験から、自治体における「広報」の意味を考えます。
入札では、動画制作、ポスター制作、キャラクター関連など、成果物の依頼が多く見られました。一方で、自治体には住民向けの行政広報と、観光客や移住希望者に向けたシティプロモーションがあります。
同じ「広報」という言葉の中にある、対象と目的の違いを整理する回です。
音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#77
・Spotify:#77
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
荒木
今日は、以前、濱口さんと一緒に取り組んでいた行政の入札案件の話から始めたいと思います。
濱口
ありましたね。行政の広報やブランディングに関する入札案件を、かなり調べていました。
荒木
そうでしたね。全国の自治体や国の案件を調べると、「広報」というキーワードだけでかなりの数が出てきましたよね。
濱口
そうなんです。最初は「広報」の案件がたくさんあると思ったんですけど、よく見ると、動画を作ってください、ポスターを作ってください、ぬいぐるみを作ってください、というような成果物の依頼が多かったんです。
荒木さんが普段話しているような、広報をどう設計するか、何を伝えるか、という川上の話とは少し違うなと感じていました。
◆行政には、広報が根付いている
荒木
そこはとても大事な違和感ですね。
まず前提として、行政にとって「広報」はかなり根付いています。自治体には広報課や広報広聴課があり、どんな小さな町でも広報紙があります。
濱口
地方に行くと、広報紙は今もありますよね。
荒木
あります。私の出身地である静岡県下田市も、人口は減っていますが、昔も今も広報紙はあります。
これは行政にとって、住民が一番分かりやすいステークホルダーだからです。住民に政策を知ってもらう。イベントや制度を知らせる。声を聞く。そうしたコミュニケーションのために、広報誌があるわけです。
濱口
住民に向けた、基本の広報ですね。
荒木
そうです。今いる住民に対して、情報を開き、知らせ、関係を保つ。これは行政広報の基本だと思います。
◆もう一つの発信が、シティプロモーション
荒木
一方で、行政の発信にはもう一つあります。それがシティプロモーションです。
濱口
観光客や移住者に向けた発信ですね。
荒木
そうです。今住んでいる住民ではなく、これから来てほしい人たちへの発信です。観光客に来てほしい。何度も訪れてほしい。移住してほしい。地域に関わる人を増やしたい。
そういう文脈で、関係人口という言葉も使われます。
濱口
関係人口ですか。
荒木
はい。住んでいるわけではないけれど、観光やイベント、ボランティアなどを通じて、その地域と関わる人たちです。いきなり移住する人は少ないですから、まずは地域に関心を持ち、何度も訪れ、少しずつ関係を深めていく。
シティプロモーションは、そうした未来の関係をつくる発信とも言えます。
◆動画やポスターの依頼が多い理由
濱口
そう考えると、動画制作やポスター制作の依頼が多かったのも分かる気がします。
荒木
そうですね。自治体としては、地域を知ってほしい。興味を持ってほしい。来てほしい。だから、動画やポスターのような成果物が必要になる。
一方で、法律や制度が変わったことを知らせるための動画制作のような案件もあります。これは住民向けの行政広報ですね。
濱口
同じ動画でも、目的が違うんですね。
荒木
そうです。住民に制度を知らせる動画と、観光客や移住希望者に地域の魅力を伝える動画では、役割が違います。
だから「行政の広報」と一括りにすると、少し分かりにくくなります。
◆キャラクターは、住民向けにも外向けにもなる
濱口
入札案件の中には、ぬいぐるみやキャラクター関連のものもありました。
荒木
キャラクターは面白いですね。
住民にとっては、自分たちの町のキャラクターとして愛着が湧く。外の人にとっては、その地域を知るきっかけになる。つまり、住民向けの広報にも、外向けのシティプロモーションにもなります。
濱口
たしかに、くまモンやふなっしーも、地域を知るきっかけになりましたね。
荒木
そうです。キャラクターは、地域との距離を縮めるものでもある。住民の帰属意識を高めることもあれば、外の人に地域を覚えてもらうきっかけにもなる。
だから、行政がキャラクターやグッズを活用する意味は分かります。
◆「広報」という言葉の中身を分けて見る
荒木
今回の話で大事なのは、行政の広報には二つの方向があるということです。
一つは、今いる住民に向けた広報。もう一つは、観光客や移住希望者、関係人口に向けたシティプロモーションです。
濱口
同じ「広報」と書かれていても、誰に向けているのかで意味が変わりますね。
荒木
そうですね。行政の入札案件を見ていて、広報の意味がバラバラに見えたのは、実は対象と目的が混在していたからかもしれません。
住民に知らせるのか。外の人に関心を持ってもらうのか。そこを分けると、行政広報の見え方はかなり変わると思います。

