#37 経営者は、なぜ集まるのか|第3回

このノートの考え方については、こちらにまとめています。
ーなぜ私は「社会設計ノート」を書いているのかー
経営者は、なぜ集まるのか
― 経営者団体・コミュニティから考える関係と制度 ―
第3回 経営者団体は、何をしているのか
前回、日本の外にも目を向けながら、経営者団体やコミュニティが多数存在すること自体は、日本だけの特徴とは言えないことを書きました。
むしろ気になったのは、その違いです。
経営者が集まる。
企業が集まる。
会費を払い、定期的に顔を合わせる。
外から見れば、似たような場に見えるかもしれません。
しかし、改めて調べてみると、その中身はかなり違っていました。
政策について意見をまとめる団体があります。
地域の事業者を支える団体があります。
同じ業界に属する企業が共通の課題について考える団体もあれば、経営者自身が学び合うことを中心に据える場もあります。
奉仕や倫理を掲げる組織もあれば、仕事の紹介や商談を目的として設計されたコミュニティもあります。
一口に「経営者団体」と呼んでいたものの中に、全く異なる役割が同居していたのです。 経営者団体・経営者コミュニティに関する基礎調査レポート
「集まる理由」が違えば、場の役割も違う
例えば、経団連や経済同友会のような団体には、企業や経営者の考えを集め、政策に反映させようとする役割があります。
一社だけでは社会に届けにくい意見を、複数の企業や経営者が集まることで、一つの声として外へ届ける。
ここで中心にあるのは、仕事の紹介ではありません。
企業や経営者の側から、社会の制度や政策に働き掛けることです。
一方、商工会議所や商工会は、地域の事業者を幅広く支える役割を担っています。
経営相談や地域振興、行政との接点づくりなど、活動は一つに限られません。
今回の基礎調査では、こうした法定の地域団体は、政策提言、学習、相互扶助、信用形成、地域や行政との接続など、かなり幅広い機能を担っていることが確認されました。 経営者団体・経営者コミュニティに関する基礎調査レポート
さらに、業界団体があります。
例えば自動車業界であれば、安全、環境、技術、サプライチェーンなど、一社だけで解決できない課題があります。
同じ業界に属する企業だからこそ共有できる課題があり、その課題について調査し、意見をまとめ、場合によっては社会や行政へ伝えていく。
ここでは、「経営者だから集まる」というよりも、「同じ産業に属しているから集まる」という面が強くなります。
学ぶために集まる場もある
また別の形もあります。
中小企業家同友会のように、経営について学ぶことを大切にしてきた団体があります。
経営指針をつくる。
他社の経験から学ぶ。
自社の経営を振り返る。
そこでは、仕事を直接紹介し合うことよりも、経営者自身が考え、会社をより良くしていくことに重心があります。
倫理法人会のように、経営者自身の考え方や行動の在り方に目を向ける団体もあります。
ロータリークラブのように、社会奉仕を大きな柱としてきた組織もあります。
いずれも経営者が集まっています。
しかし、「何のために集まるのか」は同じではありません。 経営者団体・経営者コミュニティに関する基礎調査レポート
そして近年、私自身も利用してきたような、仕事の紹介や商談の機会を明確に提供する経営者コミュニティも増えています。
BNIのように、紹介の仕組みそのものを細かく設計した場があります。完全紹介制や決裁権者限定といった参加条件を設けるコミュニティもあります。
こうした場では、参加者に提供する価値が、比較的分かりやすく設計されています。
誰と出会えるのか。
どのように紹介が生まれるのか。
参加することで、どのような仕事の機会が得られるのか。
経営者の集まりであることは同じでも、その役割は、政策提言を行う団体とはかなり違います。
「同じもの」として比べることの難しさ
ここまで見てくると、一つ気付くことがあります。
経営者団体を比較するとき、会員数や会費だけを比べても、あまり意味がないのではないかということです。
政策を社会へ届けることを目的とする団体と、仕事の紹介を目的とするコミュニティでは、成果の測り方が違います。
学びを中心とする団体であれば、参加した経営者が自社の経営に何を持ち帰ったのかが重要でしょう。
地域団体であれば、会員企業への支援だけでなく、その地域にどのような影響をもたらしたのかも見なければなりません。
紹介型のコミュニティなら、参加者が求める相手との出会いや仕事につながったかどうかが、大きな意味を持つでしょう。
つまり、
その団体が何をしているのかを理解するには、まず「誰に、どのような価値を提供しようとしているのか」を確かめる必要があります。
参加者が多いから優れているわけではありません。
歴史が長いから成熟しているとも限りません。
反対に、歴史が浅いから価値が小さいとも言えません。
目的が違えば、見るべきものも違うのです。
面白い違いが一つあった
今回の基礎調査で、特に気になったことがありました。
政策提言を大きな役割とする団体と、取引や紹介を大きな役割とする団体は、かなり分かれていたのです。
調査対象となった団体の中では、この二つを同時に主要な機能として掲げる例は確認されませんでした。 経営者団体・経営者コミュニティに関する基礎調査レポート
考えてみれば、不思議ではありません。
政策提言は、一社だけでは実現しにくい課題について、複数の企業の声をまとめ、社会全体の仕組みに働き掛けようとする行為です。
それによって制度が変われば、必ずしも会員だけが利益を受けるわけではありません。
一方、仕事の紹介は、基本的に参加している会員の間で価値が生まれます。
一方は、外へ向かって広がる働き。
もう一方は、会員同士の中で直接的な価値を生み出す働き。
もちろん、現実の団体はそれほど単純ではありません。
政策を提言する団体の中でも、人と人との出会いは生まれます。学習を目的とする場から仕事が生まれることもあるでしょう。
しかし、その団体が何を中心に置いているのかを見ると、違いが見えてきます。
団体を見るとき、何を見るのか
ここで、私自身の過去の参加経験にも戻ってみました。
私はこれまで、仕事につながる出会いを求めて参加した場があります。
学びや交流を目的とする場にも参加してきました。
当時は、それぞれの団体について「自分に合うか、合わないか」という視点で見ることが多かったように思います。
それは参加者として当然の見方でしょう。
しかし今回、少し離れたところから見直してみると、別の問いが浮かびます。
その団体は、何を生み出そうとしていたのか。
誰のための場だったのか。
参加者同士の関係をつくることが目的だったのか。そこから仕事を生むことだったのか。経営者を育てることだったのか。地域を支えることだったのか。社会の仕組みに働き掛けることだったのか。
こうして役割を分けてみると、「経営者が集まる」という一つの行為の中に、かなり多様な機能が含まれていることが分かります。
そして、ここから次の問いが生まれます。
情報を得る。
学ぶ。
仕事を紹介してもらう。
相談する。
誰かを助ける。
そうした一つ一つの出来事は、その場限りで終わるのでしょうか。
それとも、繰り返し関わる中で、経営者や企業に何かが蓄積されていくのでしょうか。
もし蓄積されるのだとすれば、それは単なる「人脈」と何が違うのでしょう。
次回は、そこを考えてみたいと思います。
人脈は、いつ資本になるのか。
