第2回 人が集まる場は、関係が育つ場なのか――北海道ボールパークFビレッジ

球団は、地域の何になるのか――プロスポーツと関係資本

第2回 人が集まる場は、関係が育つ場なのか――北海道ボールパークFビレッジ

前回、球団が地域にあることと、球団と地域の間に関係資本が育つことは同じではない、と書いた。では、その二つを分けるものは何か。最初に見たいのが、北海道北広島市の北海道ボールパークFビレッジである。

運営会社の「ANNUAL REPORT 2025」によると、2025年の年間来場者は459万1,357人だった。北海道日本ハムファイターズ主催のレギュラーシーズン公式戦71試合の来場者は223万2,364人、それ以外は235万8,993人である。試合のない日の平均滞在時間も、開業初年の3時間8分から3時間34分へ延びた。

ただし、「公式戦以外」を、そのまま「非試合日の来場者」と読むことはできない。ポストシーズンや別の野球イベントなども含まれるからである。来場者数は延べ人数であり、同じ人が何度訪れたかも分からない。それでも、Fビレッジがレギュラーシーズンの試合だけに依存しない場所として使われていることは見えてくる。

人を集める場と、関係を蓄積する場は同じではない。

球場を、365日の接点装置にする

北海道ボールパークFビレッジは、新球場エスコンフィールドHOKKAIDOを核とする約32ヘクタールのエリアである。運営側は、野球観戦のためだけの施設ではなく、ファン、パートナー、地域とつくる「共同創造空間」を掲げる。現在の営業案内でもエリアは365日開かれ、試合のない日の利用として、球場見学、飲食、買い物、温浴、宿泊、遊び、農業学習など、複数の入口が用意されている。もちろん、全施設が毎日同じ条件で営業するという意味ではない。

重要なのは、施設の数そのものではない。一人の人が、ある日は観客として、別の日には食事や散歩、学び、仕事のために戻ってこられることである。接点が一度で終わらず、訪れる理由と役割が変わる。Fビレッジの「場」としての特徴は、野球を見ない人も取り込んだことより、同じ人が異なる関わり方を選べるようにした点にあるのではないか。

場は、人を同時に集めるだけならイベント会場である。時間を置いて再び訪れ、前とは違う人や活動に接し、次の行動へつながるなら、関係を反復させる装置になり得る。非試合日の滞在時間は、その可能性を示す数字ではある。ただし、長く滞在したことだけで、信頼や協働が生まれたとはいえない。

場が関係をつくる前に、関係が場をつくっていた

Fビレッジを、完成した施設からだけ見ると、大型投資が人と企業を引き寄せたように見える。しかし、順序はそれほど単純ではない。

北広島市と北海道日本ハムファイターズは、建設候補地が正式決定する前の2018年1月にパートナー協定を結んだ。連携分野には、スポーツ教室だけでなく、健康・医療、食育、キャリア教育、学校の体育授業などが置かれている。開業後には、ラジオ体操、ウォーキング、市民参加型の清掃、学校授業、住民向け観戦機会などの連携事業が続く。

また、行政、企業、学識経験者などによるオール北海道ボールパーク連携協議会には、北広島市を含む圏域18市町村が参加する。2023年には北広島市、運営会社、北海道医療大学が、大学キャンパスや病院の新設を含む共同まちづくりの基本合意を結んだ。大学と病院は将来計画であり、成果として数える段階ではない。それでも、Fビレッジという場の周囲に、教育、医療、防災、交通をめぐる制度的な関係が重ねられている。

つまり、場がゼロから関係を生んだのではない。先にあった対話や協定が場を可能にし、完成した場が、それらを反復する共通の舞台になった。Fビレッジは「場起点型」に見えるが、その場自体が、すでに関係の産物でもある。

接点と愛着は、同じ方向に動いているか

北広島市が2025年12月に、市内の18歳以上1,000人を無作為抽出して行った市民満足度調査には、場と住民の関係を考える手掛かりがある。回答は459件。Fビレッジを訪れたことがある人は87.1%、「できてとても良かった」「良かった」の合計は79.7%だった。7段階評価では、「Fビレッジへの愛着・誇り」が5.42と高い。

訪問歴のある回答者の「愛着・誇り」は5.56、訪問歴のない回答者は4.15だった。接点のある人ほど愛着が高いという関係は見える。ただし、この調査だけで、訪問したから愛着が生まれたとはいえない。もともと球団への関心が高い人ほど訪れている可能性もある。相関は、因果の証明ではない。

さらに、愛着は関係資本の一部にはなり得ても、それだけでは十分ではない。住民が運営やまちづくりに意見を返せるのか。球団、自治体、学校、商店、交通事業者の間に、次の協働を起こせる信頼や役割が残ったのか。現在の来場者数や満足度調査は、その問いにまだ直接答えていない。

誇りと不便は、同じ場所に存在する

同じ市民満足度調査では、道路の渋滞状況が2.81、交通機関の混雑度が2.99、交通機関の充実度が3.42だった。中立点の4を下回る。愛着や景観、観光資源への評価が高い一方で、交通は生活上の負担として残っている。人を集める場は、その人を運ぶ仕組みまで含めて初めて地域の日常に接続する。関係資本は、接点の数だけでなく、その費用と不便を誰が引き受けるかまで見なければ測れない。

球場本体は民間が建設・所有する。その一方、地域との接続条件には公的な負担もある。北広島市の2024年の市民説明会資料では、新駅を除くボールパーク関連事業費は2022年度までに約114億7,000万円と説明された。国と北海道の支出金、地方債、一般財源などで構成される。さらに、Fビレッジに隣接して建設中のFビレッジ駅について、市は駅施設と自由通路などを合わせた総額を112億5,000万円と見込み、請願駅として基本的に市が負担し、国の補助、地方債、企業版ふるさと納税などを充てると説明している。金額は範囲と時点が異なるため、単純に合算すべきではない。

一方、日本ハム株式会社が決算で「ボールパーク事業」として開示した2026年3月期の売上高は310億2,700万円、事業利益は54億1,800万円だった。これは球団と球場を含む事業区分であり、Fビレッジ単体の数字ではない。利益を計上できることは、接点を反復する事業を継続する条件の一つである。だが、企業の利益は、地域への価値分配をそのまま表すものではない。

2026年の日本地理学会の研究発表も、税収や地価、人口、交流人口などの効果を確認する一方、経済効果を実感する地元商工業者は必ずしも多くなく、地価上昇に伴う住み替えの停滞や交通渋滞を課題として挙げた。学会発表の要旨であり、最終的な評価ではない。ただ、地域を一人の受益者として扱えないことは分かる。

場は、関係の器であって、関係そのものではない

Fビレッジは、少なくとも二つの条件をつくった。一つは、試合がなくても戻れる理由を増やしたこと。もう一つは、球団と自治体、企業、教育、医療、交通を、同じ場所をめぐる継続的な調整に参加させたことである。この意味で、Fビレッジは関係資本を形成する「器」になりつつある。

しかし、器ができたことと、地域に資本が残ったことは同じではない。来場者が利用者のままなのか、担い手にもなるのか。住民の意見が運営を変えるのか。便益を受けにくい地区や商店にも、別の回路が開かれるのか。公費と不便を引き受ける人々に、判断材料と参加の機会が返されるのか。そこで初めて、共同創造という言葉の中身が問われる。

今回の比較軸でいえば、Fビレッジは「大型投資・場起点型」の関係形成として読むことができる。重心は、異なる機能を一つの空間に集め、接点を反復させることにある。強みは、事業として続く仕組みと、関係主体を増やせる拡張性である。課題は、増えた価値と負担が誰に配分され、地域の側からも場を変えられるかを測ることである。

場は、関係を保存する容器ではない。人々がそこで別の役割を持ち、相互に働き掛け、次の行動を起こせるとき、初めて関係は資本として使われ、継承される。Fビレッジは、その入口をつくった。関係が地域に残るかどうかは、これからの運営と検証にかかっている。

では、大規模な場を持たない球団は、何を媒介に地域との関係をつくるのか。次回は、地域で暮らす選手という「人」から始まった佐賀アジアドリームズを見る。

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