【過去の人気コラム】#11 広報と広告って何が違うの?(1)
2019年年末から始めた「荒木洋二のPRコラム」と「聴くコラム」ですが、おかげさまで85回の配信を重ねて参りました。
2022年7月から2022年9月までは、筆者が出版に向けた執筆活動に集中させていただきたく、新規のコラムはお休みとさせていただきます。そこで再開するまでの間、過去の配信の中から人気のあったコラムを再送させていただきます。
2021年1月18日配信
こんにちは、荒木洋二です。
広報とPR。いずれも本来の正しい意味とは少々乖離した言葉として、社会に浸透してしまっています(「広報とPRって何が違うの(1)(2)」を参照)。そのことが少なからず、実際の事業に支障を来しているのでは、と憂慮しています。
初めて会った人に、当社の事業内容が企業の広報支援だと説明すると、「ああ、広告代理店ですか」とか「宣伝なんですね」という反応に時折出くわします。広報と広告の違いが分からずに、混同している人はまだ一定数存在します。漢字で書くと1文字違い。「報せる」と「告げる」ですから、意味が同じと捉えても不思議はありません。
◆対象をメディアに限定すると
パブリック・リレーションズとは利害関係者と良好な関係を築くことです。つまり概念です。広告は英語ではアドバタイジング(advertising)といいます。広告はマーケティングの発達とともに進化を遂げてきました。広告はマーケティング戦略の一環であり、その実務の一つ一つは戦術です。そもそも論でいえば、比較する次元が異なることです。ですが、今回のコラムではいったんそのことは脇に置き、業界の一般論から解説します。
広報関連の書籍では「広報と広告の違い」について、よく言及しています。そこでは狭義の意味での「広報=パブリシティ」と広告を比較しています。狭義というより、パブリック・リレーションズの対象の一つである、メディアに限定したという方が正しいでしょう。メディア・リレーションズの現場での実務の観点から、四つの違いがあります。
(1)メディア側の担当部門
広報は広報担当者が担います。彼らが関係を築くのは、報道局(部)の記者や編集局(部)の編集者などです。広告を出稿する場合、メディア側は広告局(部)の担当者が窓口です。
(2)メディア側の掲載面
広報は報道ですからニュース面に記事が掲載されます。広告は広告面、テレビではCM枠です。新聞や雑誌では必ず記事と広告を識別できるように、広告ページには目立つように「広告」「PR」と記載されています(ここでもPRは誤った使い方をされている)。ウェブメディアも同様です。しかし、数年前、ちょっとした事件が発生しました。PR業界では「ペイド・パブリシティ」という業界用語があります。通称、ペイドパブ。お金を支払って、記事風の広告を出稿することを言います。このペイドパブもお金が発生しているので、広告に分類されます。にもかかわらず、何も記載しなかったのです。読者をミスリードする、もっとはっきり言えば、読者を騙すという、あってはならないことです。有名週刊誌で記事になったので記憶している人もいるかもしれません。
(「広報と広告って何が違うの? (2)」に続く)