Weekly Essay 60人超の職員インタビューを掲載する日本生命の採用サイト
新年度が始まりました。大学生は就活真最中の時期ですね。私の次女が大学4年生なので、日々緊張感だったり、慌ただしさだったりを身近に感じています。企業側から見ると、自社が望む人材を確保できるのか。特に中小・中堅企業の採用に関わるスタッフは、学生同様に緊張と慌ただしさの中で仕事をしていると思います。
近年、新卒・中途に限らず、採用のための専用ページ、採用LP(ランディングページ)を開設する企業が急増しているのではないでしょうか。採用LPの作成を事業として掲げる事業者も、私の周りを見ただけでも少なくありません。企業社会では「採用広報」なる言葉が広まっているように、採用LPは対象を学生などの求職者に絞った広報活動の一環です。
いくつかのページや事業者の制作実績などを閲覧したことがあります。若手の社員へのインタビューが2、3人から多くて数人と、経営者から学生に対するメッセージが掲載されています。残念に感じることは、確かにきれいにデザインされているのですが、おそらく等身大、ありのままの姿ではないだろう、と思えてしまうことです。どうにも内容が着飾り過ぎています。しかも内容が薄く情報量が十分ではありません。広報・ブランディングの神髄は、自社の「舞台裏」にある魅力をいかに引き出し、情緒的な側面の情報としてどう「見える化」し、それをどう伝えられるかにあります。伝える際に最も留意すべき点の一つが、ありのまま、等身大の情報かどうかなのです。
先週のことなのですが、生命保険最大手である日本生命の採用専用サイトを閲覧する機会がありました。大手だからこそできるのでしょうが、デザイン面もさることながら、内容の一つ一つが非常に丁寧でしかも充実しています。特に目を見張ったのが「職員インタビュー」のページです。その数なんと、64人です。入社2年目の社員とその上司の二人だけで担当したといいます。同ページのトップではその64人の上半身の写真が所狭しと並んでいます。写真にはどんな職なのかが分かるように、「総合職」「営業総合職」「エリア総合職」など、色付けされたバナーが施されています。写真の下には「1〜5年目」「6〜10年目」「11年目〜」など社歴や、仕事内容、掲載内容に関するタグ付けもしてあります。インタビュー内容も全て共通して「仕事の基礎理解」「この仕事のリアル」と分けられ、その後に入社理由やキャリア形成の流れが掲載されています。
大多数の中小・中堅企業は、限られた人員や予算の中で採用に取り組んでいます。大手と違って専任担当がいるわけでもないでしょうし、しかも広報担当者がいなかったり、いても未経験者や兼任だったりするのが大半です。そんな状況を照らし合わせてみると、無理もないことです。そもそも真の意味での広報が、企業社会に浸透していないことが問題の本質です。批判・意見を述べたいのではなく、自戒の気持ちを強くした次第です。
3月27日(月) 荒木洋二のPRコラム
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