Weekly Essay 中古車販売大手・ビッグモーターの「舞台裏」

人気俳優の佐藤隆太さんが出演しているテレビCM。そう聞いて、どの会社・商品のCMが思い浮かびますか。私の場合、中古車販売大手・ビッグモーターのCMです。最近もよく流れています。「車を売るならビッグモーター」という歌詞と軽快なメロディが、短く印象的で耳に残り、覚えやすいですよね。
佐藤隆太さんはさわやかですし、熱血漢で真面目という印象を持っています。私の場合、約15年前に大人気だった、人気漫画が原作のドラマ『ROOKIES』(TBS)での熱血教師役と重ねて見てしまうからでしょう。家族で毎週楽しみに視聴していたし、映画『ROOKIES 卒業』も家族4人で観賞したほどです。

ビッグモーターという会社は、そんな佐藤隆太さんと重なり、さわやかで真面目な企業なんだろう、と私たちは勝手に想像してしまいがちです。広告とは、CMとはそういう効果を狙っているので、その思惑にまんまと乗ってしまっているわけです。
しかし、ビッグモーターの実態はそんな印象とは随分とかけ離れたものだろう、ということが最近露わになりました。保険不正請求の問題が先週12日(水)を皮切りに連日報道され、世間を賑わしています。ビッグモーターは創業47年、6,000人の従業員を擁しています。報道によれば、未上場ながら売上高3,000億円、全国300店舗以上展開し、買取台数6年連続日本一を謳う大企業です。
どんな不正を行ったのか。報道されたニュースのリンク先を以下にいくつか載せますので、確認してみてください。極めて悪質で不誠実極まりない実態に非常に驚きました。あきれるほどのブラック企業です。実際の被害に遭った人たちは相当憤慨しているに違いありません。

『NHK NEWS WEB』(2023年7月12日)
『讀賣新聞オンライン』(2023年7月14日)
『ABEMA TIMES』(2023年7月15日)
『Yahoo!ニュース(共同通信)』(2023年7月17日)

ビッグモーターのホームページは、明るく賑やかなデザインで着飾っています。
広報の基本は等身大、ありのままの姿を「見える化」することです。経営の「舞台裏」をどれほど明かせるのか。「舞台裏」の情報にはその企業の魅力、その企業らしさ、その企業だからできること、その企業ならではの取り組みがあふれています。誠意ある企業なのか、嘘をつかない信頼に足る企業なのか、その企業の人格が現れます。
ビッグモーターの採用ページには働く社員13人のインタビュー記事が掲載されています。このページを見る限りは広告で感じた印象と重なります。しかし、実態は大きくかけ離れ、一部報道によれば、4割が不正に関わっていたようです。私見に過ぎませんが、えてして採用専用ページはどの企業も実態を表していない、どこかよそ行きの着飾った姿を表す内容が大半です。普段の姿、等身大ではないことが多いように見受けられます。

ビッグモーターの実態、報道によってさらされた「舞台裏」を知ると、社員に対しても顧客に対してもブラック企業だったと言わざるを得ません。どんな人に対しても、飾らないありのままの姿をいつも見せられる。そんな企業文化をつくっていくことは、経営者の最も重要な責務の一つではないでしょうか。


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