広報PRコラム#98 「情報発信」をひもとく(13)

こんにちは、荒木洋二です。

情報発信をひもとくとはどういうことか。情報発信を構成する四つの要素を再掲します。

①目的     :何のために伝えるのか。
②(主体と)対象:(誰が)誰に伝えるのか。
③情報の内容  :何を伝えるのか。
④手段     :どうやって表すのか。どうやって伝えるのか。

前回まで7回にわたって、「③情報の内容」を詳しく解説しました。特に「舞台裏」の情報がどれほど重要なのか、ということを解き明かしました。

◾️表し方と伝え方の組み合わせ

今回から「④手段」について解説します。
これまでのコラムで何のために誰に何を伝えるのかが、明らかになりました。ここまでは戦略の領域でした。ここから、つまり「手段」からは戦術といえます。

手段は主に二つに分かれます。

一つはどうやって「見える化」するのか、コンテンツをどう作るのか、ということです。特に「舞台裏」に関していえば、どれほど魅力があふれていたとしても、「見える化」しないことには伝わりません。「見える化」とはどう表現するのか、ということです。表現の手段、方法が問われます。相手にしっかりと伝わるような表現とは何か。つまり表し方をどうするのか、ということです。

もう一つは、そのコンテンツ(=「見える化」した情報)を相手にどう届けるのか、つまりデリバリーの手段です。相手の状況や状態を把握した上で、どんなコンテンツをどうデリバリーするのかを判断します。情報の受け手のことをどう捉えるのか、伝わるためにはどうすべきなのか、分析力も求められます。表し方を工夫するだけでは十分ではありません。加えて、伝え方をどうするのかも重要です。

表し方と伝え方をどう組み合わせるのかが、情報発信の成否を分けるといえます。

◾️体験を「見える化」

まず、「見える化」がなぜ必要なのかを改めて整理します。

どんな体験でも誰の体験でも、体験そのものはその場で消費され、その本人の中だけにとどまります。体験は個人、あるいは集団に何らかの感情を芽生えさせたり、強く根付かせたりします。価値を生み出す過程において、社長や社員たち、取引先や提携先、顧客など、それぞれが関わり合いながら、さまざまな営みを繰り返し、体験を積み重ねています。

体験を通して、個々人が心のうちに次のような思いを抱いたとします。

・「事業を先頭に立って推進する中で、理念やビジョンがどれほど重要かが身にしみた」
・「非常に貴重な体験ができて、自分の財産になった」
・「こだわりが随所に込められたサービスで、予想を超えた驚きがあり、感動も得られた」
・「協力して取り組み、障害を共に乗り越えることで共感や一体感が育まれた」

これらはあくまでも個人の心の中だけにとどまっています。あるいは同じ体験をした集団の中だけでしか共有できません。その思いも時間の経過とともに薄れてしまったり、集団で同じ体験をしたとしても個々人によって感じ方はさまざまだったりします。だから体験を「見える化」する必要があるのです。

◾️媒体により「見える化」を実現

体験の「見える化」において、最も一般的で手軽なのが「口頭」での表現です。ただ、普段の会話で、あるいは社内イベントや外部向けのセミナーで体験談として言葉にすることがあったとしても、その場で消費されて終わってしまいます。会話の相手、イベントやセミナーの参加者という限られた時間、閉じられた空間で完結してしまいます。口頭による言葉はその場で消費されるため、蓄積できないし、広がりもありません。企業における情報発信の手段としては、極めて限定的ですし、原始的ともいえます。

だからこそ媒体が必要なのです。媒体とは、情報の送り手と受け手を媒介する手段のことで、両者を仲立ちし、とりもつ役割を担っています。ここで媒体が発展してきた歴史をたどりたいところですが、長くなり過ぎますので別の機会にします。

現代において、媒体による「見える化」にどんな表現手段があるのか。次に示します。

・音声
・文字(テキスト)
・写真(静止画)
・映像(動画)
・図像(図表・図解)
・イラスト・漫画

媒体そのものとしては印刷(紙)媒体と電子媒体の二つに大別できます。もう一つ挙げるとすれば、マスメディアがほぼ独占している電波媒体です。音声メディアのラジオは電波媒体に分類できるものの、今やインターネットでの配信も可能になっていますので電子媒体に分類しておきます。

そうすると、2種類の媒体で使える表現手段は次のとおりです。

・印刷媒体:文字、写真、図像、イラスト・漫画
・電子媒体:音声、文字、写真、映像、図像、イラスト・漫画

それぞれの表現は単体、あるいは複数組み合わせることで、一つのコンテンツとして作られます。

情報の受け手の状況と状態に合わせて、表現手段の組み合わせを変幻自在に操るのです。たった一つ情報を受け取っただけで、その情報の送り手(企業)やその内容を認知したり理解したりすることは不可能と言っていいでしょう。ましてや受け手の心を動かし行動変容を促すことなど、できるはずがありません。そして、たった一つの表現手段で全てをまかなえるはずがありません。

心理を見抜ける鋭い洞察力を備え、柔軟な発想のもとに創意工夫してコンテンツを作り続けることが決定的に重要なのです。

◾️情報発信における3原則

次に伝達手段をどうするのか、詳しく解き明かしていきましょう。ここで表現手段と合わせて、全体像を理解するためには、情報発信(手段)における3原則を解説しておいた方がいいでしょう。

次回は、情報発信における3原則について端的に述べたいと思います。

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